 やっぱり本は面白い ※ ※
 やっぱり本は面白い ※ ※ |  | 最近読んだ本ベスト5 ・ 海峡を渡ったバイオリン ・ 一本桜(山本一力) ・ 告白(ジェンキンス) ・ 背負富士・梅咲きぬ ・ マンドリン物語 最近私は、「山本一力」さん の本にはまっている。 人情時代劇は、癒し系の本 なのかもしれませんね。 今度背負富士がNHK木曜 時代劇に採用されました。 | 
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              春 の 歌 声
                                                    作/モンタ・クレーン
                                                    訳/平田  純
雨は沛然と、それも、何時間も降り続いていた。
じきに晴れ上がって、帰ってきた日差しを受けた世界のすべてが光輝いて見えるようになる、そん
な春のにわか雨でなかった。
いや、今日という今日は、全世界が暗く陰惨な雲に包まれたように見えていた。
家の中の灯火さえ、この陰鬱さを追い払ってくれそうにもなかった。
そのとき突然、私は聞いた。
重苦しい大気を貫き通す、甲高く澄んだ小鳥の歌を。
私は戸口に駆け寄ると、軒先まで出て、耳を傾けた。と、また聞こえてきた。
「春」のメッセージを込めて、心のありったけを歌う小鳥の澄みきった調べが。
小鳥にとって、世界は暗くもなければ、濡れそぼってもいないし、陰鬱でもなかった。
この小さな生き物は、その小さな胸で、雨はやがて止むだろうし、太陽が再び姿を現すだろう、そ
して、雨のおかげで世界は前にもまして美しくなるのだと知っていたに違いないのだ。
だから、小鳥は雨の止むのを待たないで、春の大洪水のさなかで、歓びに溢れたメッセージを高ら
かに歌い上げていたのだ。
私は立ったまま、しばらくの間、近くの木立の枝の間を、小さな大歌手の姿を求めて見回した。
うまく隠れていて、その姿は見えなかった。
メッセージを届けるために、別に姿を現す必要がなかったのだ。
小鳥の小さな喉は、横溢する歌声できっと裂けんばかりだったろう。
雨に濡れないようにしながら、まだしばらく聴き耳をたてていると、私は姿の見えない小鳥の爽や
かな歌に、私の心が高く晴れやかになっていくのを感じ取った。
仕事に戻る前に、私は暗い空を眺め回した。
はっきりそうだとは言えなかったが、暗い雲が少し、わずかに切れかかっている、と思えた。
本当に太陽は姿を見せてくれるのだろうか?それとも、あれは、私の心の中で響いた、小鳥の歌の
こだまなのかしら?
どっちにしても、世界は前よりも明るく、爽やかだった。
ちっぽけな生き物の一つが、そうあらせようとして力の限りを尽くした。ただそれだけのことでだが。
(私たちが、それ以下で済ませていいものだろうか?)
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